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Days of "dancin' in the vein"

葉脈ダンスの日々

   
カテゴリー「NICEDREAM」の記事一覧

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PLATFORM(20100730)

駅のホームで父と一緒に電車を待っていた。
通勤時で、ホームはサラリーマンやOLで溢れている。
父と私も出勤するのだ。行き先は違うが、並んで電車を待っている。
と、ふいに、父がひょいと線路に飛び降りた。
スタスタと線路を横断して歩いていく。
私は驚き、うろたえた。
てっきり父が自殺するために線路に降りたのだと思った。
まさか父にそんな願望があるなんて考えたこともなかった。
線路に降りて父を助けるべきかと思ったが、
もし電車が来れば私も巻き添えになる。
しかし私が躊躇しているうちに、父はスタスタと線路を横断し、
またスタスタとレールを跨いで引き返してきた。
得意そうな顔をしている。いわゆる「どや顔」というやつだ。
どうやら父は、単に自分の勇気をひけらかしたかっただけらしい。
しょうもない、と私は腹を立てた。
こんなとこでええかっこしても迷惑なだけや、と思い他人のふりをしていると、
父は何事もなかったようにホームに戻ってきた。
しかしそれでほっとする間もなく、今度は別の男が線路に降りた。
見れば兄だ。
兄は父のようにノンキに線路を横断したりせず、
線路の真ん中で仁王立ちになった。
兄は本気だ、自殺したいのだ。
私がおろおろしていると、いつのまにか父は再び線路に走り降りていた。
そしてまるでスーパーマンのように、兄をわしっと両腕で掴んで軽々と持ち上げ、
そのままジャンプしてホームに戻って来た。

兄はホームに三角座りをして泣きじゃくっていた。
私は切なく、けれどなすすべもなく、ただ兄の背中を撫で続けた。

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SACRIFICE(20100906)

その川は海へ流れ込むのではなく、海を源泉として町に流れ込んでいるのだった。
町は海より低い位置にあり、滝のように入江から海は川へと注ぎ込んでいる。
ごうごうと勢いよく流れる川は、町の中ほどで直角に曲がる。
その手前に大きなコンクリートの橋がかかっている。
 

川の神はいつも生贄を欲していた。今年になって、すでに4人の子供や大人が川の神に捧げられた。
けれどそれらは、川の欲しているものとは違うらしい。
氾濫の収まらない川に、いくら生贄を投げ込んでも、川は荒れるのをやめようとしない。
 

この日も、川に一人の少女が投げ込まれた。
けれど違うのだ。川が欲しているのは彼女ではない。
川は荒れる。濁流に飲まれ下流へ流れてゆく少女を、彼女の家族が助けに飛び込んだ。
贄は彼女ではない。死ぬだけ無駄だ。
気づいた人々が、直角に曲がった川の下流から大量に飛び込み、少女を助けようとした。
川は、飛び込んだ何百人もの人間で水面が見えないほど溢れた。
 

俺はその光景を橋の上から眺め、そしてとぼとぼと部屋に戻った。
俺にはわかっていた。俺が死ななくては、川の氾濫はおさまらないのだ。
 

俺はバンドをやっていて、バンドのメンバー4人と一つの部屋で暮らしている。
部屋に戻り、トイレを済ませたら、俺は川へ飛び込もうと決心していた。
それなのに、部屋のトイレには、メンバーの一人が入っていて出てこない。
白い壁の洗面所は、アート好きのメンバーによって蛍光グリーンのペンで装飾が施されており、
それはとても美しかった。
俺はしばらくそれを眺め、あきらめて部屋に戻る。
奥の寝室には、二人のメンバーがこもっている。彼らは恋人同士だ。

残る一人のメンバーを、俺は呼び寄せた。
俺は今日限りでバンドをやめる、と俺は小さな声で彼に言った。
自分が死ななくては川はおさまらないのだということは言えなかった。
ただ、もうバンドをやめると言った。
彼は悲しそうな顔をした。
彼ならきっと、俺が川の贄になって死んだと知って、悲しい顔をしてくれるだろう。
そのことに少しだけ救われた。

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